Blenderでレンダリングすると極端に時間がかかってしまったり、レンダリング中他のことができない、そんな経験はありませんか?
そんな場面で選択肢になるのがコミュニティ型分散レンダーファーム「SheepIt Render Farm」です。プロジェクトをフレーム単位に分割し、世界中で接続している何十台、何百台もの(個人や企業が所有の)PC、サーバーに配布して並列レンダリングすることで待ち時間を大幅に減らせます。
一方で、独自のポイント制やNSFW禁止、機密、管理面の問題などの注意点もありますので、そこも含めてご紹介します。
SheepItって何?
コミュニティ分散型 一般的な企業が運営しているレンダーファームと違い、運営側がレンダーマシンを持たず、コミュニティ参加者のPCでレンダリングをする仕組みです。
価格については個人の持ち寄りPCでレンダリングするため、価格は無料です
無料の仕組みとポイント制
SheepItではポイント制が導入されています。
簡単に言うと、PCを貸し出すとポイントをもらえて、そのポイントを使って自分のプロジェクトをレンダリングしてもらうという感じです。つまりリソースの相互寄付で成り立っているので無料で利用できるのです。
このポイント実に優しい設計なのです。
レンダリングをお願いするときは 10*レンダリング時間 消費
自分がレンダリングをするときは 38*レンダリング時間 獲得
のようにもらえるポイントと消費するポイントの差が約3.8倍もあるのです。つまり、1時間レンダリングすれば約4時間も他の人にレンダリングしてもらえるのです!
「レンダリングして貢献するとそれに見合ったレンダリングポイントがもらえるから、レンダリングするだけでなく貢献もしようね!」ってことなんだと思います。
加えてCPUよりもGPUを用いた方が多くポイントがもらえるらしいです(GPUの方が電力消費が大きいため )
使ってみる
とにもかくにも使ってみようのコーナーです。どちらをやるにもまずはアカウントを作る必要があります。公式サイトにアクセスし、ヘッダーの一番右の人マークを押すとサインインが出てくるので、
その中のCreate a new accountをクリックしてユーザーを作成してください。パスワードは後ほど利用しますので、メモしておいてください。

他の人のプロジェクトをレンダリングをする
レンダリング用のクライアントをインストールします。レンダリングに参加するPCにblenderが入っているか否かは問いません(SheepItクライアントアプリで自動でインストールするため)
上のリンクからダウンロードページにアクセスし、レンダリングに参加するPCのOSにあったロゴを押すとダウンロードが始まります。

ダウンロードしたインストーラーを開き、インストールを完了してください。
無事クライアントを開けたでしょうか。
①に入力して②を押すと画面が変わると思います。これでログインが終了し、他の人のプロジェクトのレンダリングを開始します。

ちなみに筆者の放置構成(i712700 RTX3070)では一晩で160万ポイントくらいでした。
レンダリングを依頼する
レンダリングの依頼はweb上から行います。.blendファイルを2GBに収めるようにしてください。もしそれを超える場合は、分割することが推奨されています。流体キャッシュなどで2GBを超える際にはキャッシュを分割することで対応できるようです。
https://www.sheepit-renderfarm.com/getstartedにアクセスしてください。
サイト上でプロジェクトを追加し、テクスチャを含めたZIPもしくは.blendファイルを選択し、SendThisFileをクリック。Blenderバージョンは自動検出され、必要なら上書き指定も可能です。

キューに入るとフレームが順次レンダリングされ、完了した成果物をダウンロードします。
誰がレンダリングしてくれているかをみられるので面白いです。

筆者も利用してみました。
このために作ったテストファイルでレンダリングしてみました。負荷を高めるためにbump、間接照明、半透明を多用したファイルを作成してレンダリングしてみました。ちなみに下のファイルが今回の実験用ファイルです。
i7-12700 & RTX3070を利用した状態で1フレームあたり約30分ほどかかりました。
250フレームあるのでぶっ続けでレンダリングした場合250×30=7500分=125時間= 5日と5時間かかるところを、SheepItだとなんと55分で全てのフレームをレンダリングし終えました。
234万ポイントを消費したようです。

ちなみに出来上がった動画はこれです。
SheepItでできないこと
- SheepIt は、1プロジェクトあたり 2,048MB(約2GB)を超えるデータは扱えない
- NSFW・ポルノ系プロジェクトは不可
- Blender のベータ版は非対応
- OpenEXR出力は「フルフレームのみ・アニメのみ・最大4096×2160・圧縮必須」など制約があり。
- radeon系は利用不可(レンダリングフレームに差が出るため)
レンダリング参加要件
- Blender 4.4 を実行できる環境が必要
- 最低要件:RAM 8GB(空き2GB以上)、CPU 2コア、空き容量 40GB
- 推奨:RAM 16GB
- Windows:クライアントがBlenderを自動ダウンロードするため、事前にBlenderを入れなくてもよい
- Linux / macOS:Javaが必要
【重要】機密について
機密性はほぼ無いと考えて問題ないです。SheepIt は、公開しても問題ない制作物を素早くレンダリングする用途に向いた仕組みです。
従って、利用する際は 「ファイルが第三者に見られても困らない」 ことを前提に、公開可能な作品・素材だけを扱うようにしましょう。
分散レンダリングの性質上、レンダリングを担当するクライアントは、処理のためにプロジェクトデータをいったんダウンロードしてからレンダリングを実行します。
つまり、悪意のある参加者がいれば、技術的にはそのデータをコピーして内容を参照したり、プロジェクトを盗むことも可能です。
だからこそ、SheepIt にレンダリングしてもらうデータは「流出しても致命傷にならない」範囲に限定し、受託案件・社外秘素材など、守る必要があるものは最初から持ち込まないという運用が良いかもしれません。
代替案
やはりSheepItを商用利用だったり、未公開作品をレンダリングしたりするのはリスキーな面があります。そんなときは有料レンダーファームだったり、自前の分散レンダーファームを作ることをお勧めします。
有料レンダーファームを利用する
有料レンダーファームは速いですし特に機密面で信頼できます。数ある企業の中で、信頼できそうなところを3つほどピックアップして載せておきます。
自前の分散サーバーを作成する(flamenco)
PCが複数台ある方や、AWS上に構築できるなどの変態な方々は自前でレンダーファームを作成することも可能です。
なんとblender公式がリリースしており、Flamencoというソフトがあります。これを使うと複数のサーバーを束ねて使うレンダリング用分散サーバーを構築できます。ちなみに筆者が構築してみた感じだと(ソフト自体が整っているため)難しい設定などはありませんでした。
まとめ
Blenderを始めたばかりで、ノートPCなどでレンダリングが重い人にはSheepItは有力な選択肢です。学習や試作の段階では、時間のかかるレンダリングを外部に回すことで制作に集中できます。
一方で、提出データにはシーン構成や設定が含まれるため、公開しても問題ないプロジェクトに限定するのが無難です。将来的に商用案件や秘匿性の高い制作が増えてきたら、重要な作品は自分の環境(手元PC)で完結できる体制を整えるのも選択肢です。




